発知の彼岸桜 群馬県指定天然記念物

所在地 沼田市中発知町大日影一、二三四
指定  昭和三十二年四月二十三日
管理  沼田市

沼田市における県指定の文化財には天然記念物が多く、やはり山国だなあと感じる。

1. 発知の彼岸桜
2. 石墨大神宮の桜
3. 薄根の大桑
4. 石墨の一本松
5. 荘田神社の大いちょう
6. 川田神社の大けやき
7. 須賀神社の大けやき

と指定物件十二件の過半数をしめる。

さてその手はじめとして「発知の彼岸桜」をたずねてみよう。迦葉山行きバスに乗って約二分、下沢橋の停留場に降りて道を西にとり、たんぼ道を約五分歩くと前方ちょっとした岡の上に一本の大木が目に入る。ここまでの道順は人に聞く程でもないし、自動車もすぐ近くまではいれる位のよい道路であり、又目印が大きからすぐわかる。

遠くから眺めると周囲が広々としているためかさして大木とも思われぬが根元まで来ると以外にも巨木なのに驚かされる。

計測によると

目通し 約五.二四m

根廻り 約八.二〇m

高さ  約二〇m

枝張り 東西 二五m  南北二〇m

推定  約四百年

と称せられ、岡の上に唯一本、他はよせつけじとばかり樹勢極めて旺盛である。枝のところどころに寄生木があるのもめずらしく、この大木に花が満開ともなればさだめし偉観だろうとあらためて樹上を見あげる。

昔からこの附近で苗代作りがはじまる頃、みごとな花をつけるので土地の人は「苗代桜」と呼んでいる。

迦葉山詣の道すがら立寄って見るのも一興であろう。大通りからの所要時間は車で往復十分も予定すれば充分、歩いても三十分とはかからない。
 
 

太刀 銘長光 群馬県指定重要文化財

所在地 沼田市上原町一七五六番地
指定  昭和四〇年七月二三日
管理  所有者 松本岡一

利根沼田文化会館の東に住居される松本氏は刀剣愛好家出あると共に「虹泉」の号を持つ俳人として知られている。

同氏秘蔵の「銘長光」の太刀は、

刃長 二尺二寸七分    先幅 五分八厘
反  六分        鋒長(きつ先) 八分五厘
元幅 八分六厘      茎長(なかご) 六寸三分 反なし
形状は、鎬造(しのぎ)、庵棟(いおり)、身巾ややせまく、反ややつき小切先。
鍛(きたえ)は小板目肌つみ、乱れ映り立つ。
刃文は、直刃調に小丁字、五の目交り小足よく入り、匂口ほりごころとなり、処々しみごころあり。
帽子 わずかに湾(のた)れて先小丸
彫物 表……棒樋掻き通し
   裏……掻き流す
茎(なかご)磨上げ、先栗尻、やすり目勝手下り、目釘穴三つ、中程下、平に二字銘あり。となっているが、例によって素人には難解な術語の連続である。

長光は備前長船派の二代目で、父光忠につぐ名手であり、鎌倉時代の刀工を通して現存する作刀が多い。

その作風には父光忠の豪壮なる造りこみに華やかな丁字を焼いたものと、この太刀に見られるような直刃調に丁字足を交えた比較的寂しいものとある。そうした事実は長光作と称せられるものの中にその弟子達が代作、代名した作品が相当数あることを物語るが、松本氏所蔵の太刀は長光の作風を示す典型的な一振である。